音MAD合作における音声まとめの技術Tipsとか

本記事は「音MAD Advent Calendar 2021」16日目の記事です。

adventar.org

 

 

 

気が付いたら前回の記事から3年経過してました。
「合作の音声まとめTips作る」みたいなことを記事の最後に書いてたのに、まったく書いてませんでした。
ゆるして…お兄さんゆるして…

このアドベントカレンダー企画のおかげでやっと文章化することができました。
もうこの企画のために寝かせていたということにしておきます。
開き直りが大事です。

 

目次

 

合作における音声まとめ役の作業概要


合作で音声まとめをするときのミックスは、普通に音MADを作るときのミックスと若干変わってきます。
というのも、既に完成品の音声ばかりを取り扱うので、
作業としてはマスタリングに近い行為を行うことになります。

以下に、主に行う作業を箇条書きします。

 

・"Sideの"低音域を削る
・パートによっては"Mid"の低音域も少しだけ削る
・Sideの音量を少し上げる(そのパートの音作りの)

 

はい。
サイド、ミッドという単語が出てきました。なんだァ?てめェ…

この言葉、M/S処理という作業で使われる言葉です。

 

 

 

M/S処理とは

M/S処理とは、ステレオ信号を「Mid(中央)」と「Side(左右)」という2つの信号に分けて別々に処理するミキシング手法です。
出典:

studio-okina.com

真ん中にある音と、リバーブとかディレイを使ったことにより横に広がってる音に対して別々のコンプレッサー処理、イコライジングができると思ってください。


私は課金してるので非常に優秀な「Pro-Q3」というVSTがあり、

これで簡単にSideの音に対してもイコライジング処理ができますが、

音MAD作者は大体の人がVSTに関しては無課金だと思います。

 

そこで使うのがこの「MScontrol」というVSTです。

【無料】音圧や音の広がりを調節するM/S処理用プラグイン「MScontrol」が無償配布中 | AZU Soundworks

(ダウンロード方法がわからなかったらコメントしてください)

 

このプラグインでできることはMidのみ、Sideのみの音量の上げ下げができるというもの。

(他にもいろいろできますけどここでは割愛)

これを利用して、トラックを複製し、1つはMidの音量を0にしてSideの成分のみのトラックに、
もう1つはSideの成分を0にしてMid成分のみのトラックを作ります。

 

こうすることでMid、SideそれぞれにEQやコンプをかけることができるようになるというわけですね。

 

※このやり方、耳で聞いてると何もVSTをかけていない音声を再生するのと同じように聞こえるんですけど、厳密にはどうなのかわからないです。

詳しい人教えてください。

 

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ただ、正直Mid単体/Side単体でコンプをかけることって音MADだとあんまりないと思うので、
イコライジングだけしたいという場合には、「QRange」というVSTを使うのもいいと思います。

 

やっとM/S処理の話が終わりました。
では実際にどのようにやっていくかを見ていきましょう

 

合作における音声まとめの作業詳細


Sideの低音域を削る

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とりあえず最初にやることですね。
サイドの低音域というのは、削っても基本的にほぼ影響が出ません。
むしろあると音圧を上げるのに邪魔になることのほうが多いです。
思考停止で削ってヨシ!


Midの低音域も多少削る

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前回のMixの記事の時も書きましたが、
音MADはベースの音を入れてもそこまで下の帯域を補完できないことが多いです。
なので基本的にはそれなりに削っても問題ありません。

しかし、使われているドラムの素材などによっては結構ガッツリ下の帯域に入ってくることがあります。
そういった場合は、実際に音を聞きながら、違和感が出ない範囲で削るようにしましょう。

(自分が関わった合作でいうと、こちらのチャー研合作のMEGALOVANIAパートがそうでした)

www.nicovideo.jp

 

 

Sideの音量を少し上げる

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先ほど貼ったM/S処理の記事を読んでいただければある程度わかるとは思いますが、

Sideの音はMidに比べると小さい傾向にあります。

M/S処理は、Sideの音量を上げてバランスをよくし、
音圧を上げるという狙いがあります。
そういうわけで、音MADの音声はSideがあまり出ていないことが多いので、
ここで補強してやるというわけですね。

ただし、これは結構取扱注意案件です。
上げすぎるといろいろおかしくなります。
大きくしても3dBくらいが限度というところでしょう

 


 

ここまでが合作の音声まとめ特有の作業になります。
あとはいつも通りMixを行いましょう

 


書き出し、マスタリング

Mixが終わったら完成した音声をレンダリングして、

次はマスタリングの作業に移ります。


マスタリングも凝りだしたらキリがないんですけど、
基本的にはやるべきことはMixの時点でほぼ終わっているはずなので、
「他のパートに比べると音が出てるな」と思われるようなパートをコンプなどで軽く圧縮するくらいでいいと思います。

 

というわけで、最後の作業として「音圧上げ」をやっていきましょう。
といっても、音圧を上げるのは簡単で、
「リミッターを挿してメーター弄るだけ」
で終わりです。簡単ですね。

 

ただ、ここにも1つ小技があります。
例えばリミッター1つで9dB音量を上げるよりも、
リミッター3つ挿して1つ3dBずつ上げる(合計9dB)
ほうが音圧がきれいに上がるらしいです。
なんでそうなるかなんとなくは理解できてるんですけど、正確に言語化できないので聞かないでください

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9dB1個ではなく

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3dB × 3

ラウドネスノーマライゼーション

はい。また新しい言葉が出てきました。ごめんねー
ラウドネスノーマライゼーションというのは、
動画サイト側で、音圧の高い動画の音圧を一定に揃えるシステムのことをいいます。

ニコニコであれば「-15 LKFS/LUFS」
Youtubeであれば「-14 LKFS/LUFS」

音圧が高い動画は、上記のレベルまでサイト側で自動的に引き下げられます。
(ちなみにこれより音圧の低い動画は低いままになります)
なのでこの数値を目安に音圧を上げるのが理想とされています。

「別に超えてもいいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、

以下の画像をご覧ください。

 

f:id:FEAR443243:20211212213942p:plain

出典:https://www.youtube.com/watch?v=HTQ48Y1kF-8

このように、海苔波形化してから音圧を下げられると、
音が平べったくなってしまい、立体感が失われます。
そのため上限ギリギリを攻めるのが良しとされているわけですね。


ではこの「LKFS/LUFS」という単位をどうやって調べるかというと
「YOULEAN LOUDNESS METER 2」というVSTを使うことで調べることができます。

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使い方

SHORT TERMという部分は、3秒ごとのラウドネス値です。
色のついているINTEGRATEDという部分が、曲全体の平均ラウドネス値です。
ラウドネスノーマライゼーション対策に必要なのはこちらの数値です。

マスタートラックにYOULEAN LOUDNESS METER 2を追加して、
最初から最後まで通しで再生することで合作音声全体のラウドネスを確認できます。

 

無事に投稿する動画サイトに合わせた音圧になれば終了です。

お疲れ様でした。

 

 

技術とかではないが音声まとめ役になった際にやっておくとよいこと

ここからは音声まとめ役として、他の参加者に協力してもらうように事前に周知しておくとよい内容になります。

 

提出してもらうファイル名は
「〇〇(パート番号)_△△(任意)」
にしてもらうように指定する

パートが多ければ多いほど管理が大変になりますし、
リネームの作業もクソめんどくさくなるので、最初からファイル名は指定しておきましょう。

 

 

提出してもらう音声ファイルは、
原曲のサンプルレート、ビット深度と合わせてもらう

 

これ意外と重要です。
僕も最近知ったのですが、DAW側の設定と、読み込んだ音源のサンプルレート、ビット震度が違うと、

「数値的にはピークを越えてない(=音割れしていない)のに、メーターが何故か赤くなる」

という現象が発生します。
サンプルレート等が違う音源があるとMIXの際に混乱を招くので、すべて統一するようにしましょう。

というわけでオリジナルメドレーを使用するタイプの合作の場合、メドレー担当者に確認しておきましょう。

ちなみに一般的に映像用の音声は「48,000Hz」「24bit」で作成されるようです。

更に言うと、映像まとめの人にも同じ設定にするように促しておくといいと思います。

 

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赤枠の部分からDAW側のサンプルレートを変更できる

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書き出すときはこちらの画像を参照

 

 


 

以上です。最後までご覧いただきありがとうございます。

なんか書き漏らしとかもありそうなんですけど、

これでとりあえずは参考になると思います。

少しでもお役に立てれば幸いです。

 

 

 

 

 


駄文

 

こっからは完全に駄文なので読まなくていいんですけど、個人的にMixについて思ったことを垂れ流します。

 

 

前回のアドベントカレンダーで、偉そうにMixに関する記事を書き散らしたわけですけど、「ミックスって綺麗ならそれでいいわけじゃないな」というのを最近よく感じます。

というのも、私の大好きなボカロ曲に「天ノ弱」って曲があるんですが、

この曲はニコニコに上がっている音源とYoutubeに上がっている音源でミックスが全然違います。

 

www.nicovideo.jp

 

youtu.be

 

 

ニコニコ版に比べて、Youtube版はそもそもギターもドラムも違うのを使っているっぽいので音が変わってるのは当然なのですが、Mixも確実に直されています。

波形を見るとその辺がよくわかります。

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ニコニコ版

 

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Youtube



ニコニコ版がやたらと3kHz付近が持ち上がっており、ギターに若干やかましさを感じます。

音も少し軽く/薄く感じます。

 

対してYoutube版は700Hz~15kHzまでめちゃくちゃバランスがいいです。

俗にいう「音が重い/厚い」ってやつの条件を満たしています。

 

また、Youtube版はギターにガッツリコンプ感があります。

悪く言えば立体感がないんですけど、その分厚く感じます。

ニコニコ版のギターにも多分コンプはかかっていますが、立体感は残っているように思います。

ただしちょっと薄く聞こえると思います。

 

スペクトラム的に見ても、Mixの観点から見ても聞きやすいのは間違いなくYoutube版だと思います。

 

ですが私はどうもニコニコ版の(めっちゃ失礼ですけど)やかましく感じる粗削りっぽいギターのほうが好きなんですよね。

これが俗にいう「温かみ」ってやつなんだろうと思います。

 

音MADってなんでもキレイにMixすりゃいいというわけでは確実にありません。

「Mixが汚い動画代表」みたいな感じで勝手に掲載して本当に申し訳ないんですけど、例えばこの音MADのMixがめちゃくちゃキレイだったら多分面白さが下がる気がします。

(本人が「Mixとかなんもわからんからやってない」と言っていた動画です。

ちなみにMixをしていないのはわかりますが特別汚いとは全く思いません。)

www.nicovideo.jp

 

モーレスターとかもそうですが、Mixが汚いほうがおもしろい動画というのも確実にあるわけで、そのあたりの塩梅を間違いないようにするべきだなぁと、

最近Youtube版の天ノ弱のMixが違うことに気づいてついでに思ったわけです。

 

 

音ゲー等でおなじみプロコンポーザーのUSAO氏もこのように言っているので、

これはプロにとっても難しい問題なんだということがよくわかります。

 

前から言ってますけど、Mixってマジで答えがないので、

各々作るものによってうまく調整していってほしいと思う今日この頃です。